クラインのメモ帳

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『ファイアーエムブレム聖戦の系譜』プレイ感想

現在まで続くシステムの基礎を作った人気シミュレーションRPGシリーズ4作目のプレイ感想。
プレイ時間は、約95時間。
プレイ環境はWii U バーチャルコンソールです。

【全体的な感想】
昨年から『暗黒竜』『聖魔』『紋章』とプレイしてきて、本作はファイアーエムブレムシリーズで4作品目のクリアタイトルとなりました。

本題に入る前に、プレイして、早速序章だけで「あっ!」と驚かされた点がふたつあります。
まずマップの広さです。
これはおそらく多くの人が言及する点かと思います。
マップは広くてもトータルの章数はそれほど多くないことはあらかじめ知っていましたので、トータルではそこまでのボリュームは感じませんでした。
もう一点、序章の段階で感じたのは、「この段階で、もう銀の装備が手に入るのか。」ということです。
これまでに触れた作品ではゲーム中盤以降での入手が基本だった銀装備が、すでに序章のイベントで入手出来てしまったことに驚きました。
また同時に、次章から登場する敵がどれくらい強敵なのだろうかと想像されました。
銀の剣に見合う敵が出るはずだと考えたからです。

そんなこんなでプレイを進めていきましたが、重厚なストーリーはもちろんのこと、これまでの『暗黒竜』『外伝』『紋章』とはまた違ったシステムもふんだんに盛り込まれていたように思います。
詳細は後述しますが、一新された箇所、今作だけの箇所など様々です。

広いマップだからと、どんどんユニットを前進させてしまったがために、負けてしまったこともしばしばありました。
このあたりはシリーズお馴染みの展開ですが、マップが広いため注意を向ける方向が様々に散っていたのだと思います。

舞台設定についてですが、プレイ当初は地名や人物名、家系の話など、込み入った設定だと感じ、少し混乱しそうでしたが、数章進めるうちに慣れてしまい、しっかりとした設定だなと思うようになりました。

本作の難点らしい難点を挙げるとすれば、戦闘時の味方と敵のバランスでしょうか。
楽に進めすぎる、あるいは反対に運に頼らざるを得ない。
そういった戦闘が、終盤に近付くほど多くなりました。
ただ、味方の全ユニットがそうだったというわけではありませんし、ストーリーやプレイヤーの心情的な盛り上がりとの連動を考えると、気にならないかもしれません。
何よりも、どのような子世代ユニットが生まれるかは、親世代のカップリング次第なので、私がプレイした子世代の場合はそうなった、と解するのが正解かもしれません。

【システム】
ゲームを開始すると流れるのは兵種紹介ではなく、ストーリーの断片をマップや戦闘・会話画面を通して見ることになります。
これもそれまでのファイアーエムブレムシリーズからすると新しいものだと思います。

今作から登場した武器の三すくみは、その後のシリーズでも多く取り上げられたシステムです。
本作で初登場となったせいか、こころなしかこのシステムが優遇されている気がしました。
『FF4』で初めて登場した戦闘中の時間の流れを意識した戦い方が優遇されていたのと似た感じです。
ただ、それはあくまでも、三すくみだけに着目した話で、武器の重さでかなりのバランスが崩れているような印象は受けました。
シリーズ次作となる『トラキア776』では改善されているようですが、斧が全体的に重い武器であるために、回避や追撃等で不利になりやすい印象は受けました。
ただ、親世代のレックスはかなり強い印象だったので、そのあたりはもう一度彼のステータスを見て確認したいと思います。

気に入ったキャラクター同士をくっつけられる恋愛システムも本作からの登場です。
『紋章』で隠し要素的に登場した支援システムの発展形といえるでしょう。
本作の、特に親世代においては、キャラクター同士の支援だけでなく、ふたりの間に産まれる子世代のキャラクターのステータスにも影響するので、誰と誰をくっつけるかは重要になります。
このように、プレイヤー側が単なるお楽しみ要素ではなく、戦略上重要なシステムとして取り組むように仕向けたのは、新システムの導入としては上手かったのではないかと思います。

個人的に気分を盛り上げてくれたのは、各章で本城から出撃するというシステムと制圧拠点の守備ができるという点でした。
本城でユニットが並んでいる出撃前の姿は「さぁ、やるぞ。」という気にさせてくれましたし、城の守備も敵ができていることをこちらもできるようになることで、リアリティがあったような気がします。

敵味方の戦力バランスですが、上述の通り、特に終盤では両極端な戦闘を強いられたような気がします。
つまり、ザコの攻撃にはほとんど当たらないが、ボスクラスになると、反対に祈らないと攻撃が当たらないなど、両極端な戦闘が多くなったということです。
様々な特性を持つユニットたちを総和させると、バランスはよかったのかもしれませんが、いずれにしても、戦いは一対一で行いますので、このあたりのバランスは両極端だったと思います。

周回プレイでオープニングデモの演出が様々に変わるのは凝ったつくりの「ご褒美」だなと思いました。
10以上のパターンがあり、かなりストーリーの核心に迫るシーンもその中には含まれているようで、やりこむべきゲームという印象を与えてくれます。

【キャラクター】
本作はキャラクターのためにストーリーが用意されたというよりも、ストーリーを支えるためにキャラクターが存在するような、そんな作品だったと思います。
ですので、個性や見た目のインパクトがものすごく強いキャラというのはそれほどいなかったように思います。
敵側にも、単純な悪者や深い事情で敵対しているような存在はいましたが、時にコミカルな雰囲気を演出する「悪役だけどどこか憎めないキャラ」というのはいた記憶がありません。
全員出撃可能な本作ではありますが、それでも、全く出撃させなかったキャラや徐々に出撃しなくなったキャラはいます。
親世代だと子世代に結びつかないキャラクター、子世代だと終盤加入のキャラクターでしょうか。

その中で特に印象に残ったキャラクターを。

アーダン
彼は親世代子世代通して、ほとんど唯一の癒しではないでしょうか。
隠しイベントでアイテムを入手できますが、そのシーンでも彼らしさが出ていたと思います。
惜しむらくは、本作のマップの広さ、あるいはクラスチェンジ前後ともに騎乗ユニットではないということでしょうか。
あるいは、従者ではなく、聖戦士の血を引く存在だったら、どうだったのだろうとは思います。

アレス
あまりにも唐突にエルトシャンの子として登場したので驚きました。
親世代ではまったく話の出てこなかったエルトシャンの婚姻関係、既婚者であることを踏まえた上でのラケシスとの関係など、色々と考えさせられるところはありました。
名前もセリスと似ているため、なんというか、後付け感もします。
ユニットとしてはミストルティンの持つ魔防ボーナスには助けられました。

ヒル
聖戦士の血を引く人物でも、小者感を漂わせているレプトールのような人物はいましたが、彼女は最初から最後まで残虐な悪者・悪女として描かれたためか、まったくそういった印象は受けませんでした。
そうした点から、ボルガノンではなく、もう少し強い武器を与えてもよかったのではとも思いました。

アルヴィス
本作で一番悲しい役割を演じた人物なのではないでしょうか。
子世代終盤で敵(それもセリスにとっての親の仇)として登場しますが、ティルフィングを間接的にセリスに託すくだりなど、関連する演出が見事で、より一層悲壮感を与えてくれたような気がします。
『聖戦』で一番の名優だと思います。

クロードとシルヴィア
ふたりセットで。
クロードとシルヴィアが作中会話するシーンがあるのですが、そこから推測するにおそらくふたりは生き別れた兄と妹のようなのです。
しかし、「こいびと」関係を成立させ、子世代にスキルやアイテムを引き継ぐことができます。
肉親なのかどうか特段名言はされていないので、このあたりの解釈はプレイヤーに任せられているような気がしますが、ちょっと衝撃ではありました。

アリオーン
トラキア王国の王子です。
『暗黒竜』や『紋章』でいうところのミシェイルのように、「赤い竜騎士」を妹に持つ存在です。
ミシェイルは不幸な最期を遂げますが、『聖戦』のアリオーンは展開次第では、仲間にすることができます。
仲間といっても、友軍ユニット扱いではありますが、それでも、生きて共に戦ってくれたのはミシェイルのことを知っているだけに嬉しかったです。
本作ではドラゴンナイトの兄妹だけではなく、父親にもスポットが当たっており、父親の方が救われない役割を引き受けたために、兄が救われたという考え方もできるかもしれません。

【ストーリー】
本作では、最後の最後で邪悪なる存在のようなものと対峙しますが、基本的には何度となく繰り返される人間同士の争いが描かれています。
人ならざる者との戦闘はほとんどありませんし、どのキャラクターも内面はどうあれ見かけ上は人間です。
人間同士の国家間の争い、つまり『聖戦の系譜』は戦争が描かれた作品であるということです。

主人公のシグルドが、知らず知らずのうちに、大きな争いに巻き込まれていく様が描かれるのが親世代の展開です。
その過程でシグルドは、友を失い、親を失い、そして愛する人を失います。
そして、親世代のエンディングへ。

親世代エンディングのイベントはおおよそどういう形になるか見当はついていましたが、唐突に出てくる文字による語りが、いい意味でプレイヤーと突き放しているように感じられました。
これによって、プレイヤーは衝撃的なイベントに続き、唐突に親世代の終わりを告げられ、茫然とした気分を強く感じることになったのではないでしょうか。

子世代は親世代の悲劇の仇討ちのような展開でスタートします。
「もう子どもじゃない」というようなセリフも飛び出し、またしても、スタートはあくまでも小さな、個人的な動機でスタートします。
親世代の一見大きな争いも「たかだか」国家間での戦争に過ぎず、子世代にとっては物語をスタートさせる「きっかけ」であったというわけです。

このように子世代の主人公セリスも、シグルド同様、知らず知らずに大きな争いに巻き込まれていくのですが、大きな流れとして決定的に違う点があります。
それは、シグルドが追われる者であったのに対し、セリスは追う者であったという点です。
シグルドはストーリーが進むにつれ、反逆者の汚名を着せられ、賞金首に近い扱いを受けます。
当然、アルヴィス以下、各家の人々からその命を狙われることになります。
対して、セリスは解放軍のリーダー役から始まり、終盤の暗黒神の復活阻止まで、終始、求める側、追う者としての立場で行動します。
その違いはプレイヤーの心象にも作用することでしょう。
追われる者の立場であれば、どん詰まりの追い詰められた絶体絶命状態にじりじりと近づく感覚でプレイすることになりますし、追う者の立場であれば、勢いに乗って進んでいく感覚でプレイすることになるかと思います。
本作は「ストーリーがよい」と評されることの多い作品ですが、その理由のひとつは上記のように、プレイヤーの心情に対してストーリーのアップダウンを上手く訴えかけることができたからではないかと思います。

【音楽】
前作『紋章』に比べてさらに大きなメモリ容量のカートリッジを採用したことで、音楽もパワーアップ。
オープニングで高らかに奏でられるメインテーマは今までプレイしたシリーズ作品の中では最高だと思っています。

本作で登場し、後のシリーズに引き継がれたものは音楽にもあります。
レベルアップのファンファーレは、『紋章』以前の作品がリメイクされた際にも使われている点から、ファイアーエムブレムシリーズを代表するものと言えるかもしれません。

上記以外で、特に印象に残った曲など。
言い出せばキリがないので、数はかなり絞りました。

聖騎士誕生
序章のマップ音楽として登場します。
そして、終章のマップ音楽やレベルアップ時など様々な場面でそのアレンジを耳にする曲です。
そういう意味では、『聖戦の系譜』を代表する曲と言えるかもしれません。

会話1
たしか、本作をプレイする前の段階で、初めて聴いた『聖戦』の音楽だと思います。
物悲しい感じの音楽で、いったいどういったシーンで流れるのだろうかが気になっていた曲です。
実際には会話、それも恋人たちが愛を語らうような会話や肉親同士が感動の再開を果たすシーンで聴くことのできる曲です。
心が動くという意味で文字通り感動を誘う曲だと思います。

トラキア
敵軍が行動する曲はいくつかありますが、その中でも一番お気に入りの曲です。
軽快な感じがトラキア竜騎士団とマッチしていていいですね。
ストーリーの展開上、当然と言えば当然なのですが、終章でも聴けたのが嬉しかったです。