クラインのメモ帳

ゲームや日常について徒然と

『ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド』プレイ感想

国内外で数々のゲームオブザイヤーを獲得した作品のプレイ感想。
クラインの本格的なゲームプレイ復帰作。
これまでのプレイ時間は、約200時間。
プレイ環境はNintendo Switchです。

【全体的な感想】
本作はリメイクを除けば、これを書いている時点でゼルダの伝説シリーズの最新タイトルです。
前提として、私がこれまでにプレイ済、あるいは、ゲーム実況等で内容を知っているのは、本作の他は『神々のトライフォース』、『夢をみる島』、『時のオカリナ』、『神々のトライフォース2』あたりです。
時のオカリナ』に始まる3Dゼルダの、作を重ねるごとに「うわぁ、広い世界だなぁ!」と思わせるマップをさらにさらに広げ、いわゆるオープンワールド(任天堂の公称は「オープンエア」なんだとか)の形に仕上げたのがゼルダの伝説シリーズにおける本作一番の特徴だと思います。

私自身は「日本のゲームはキャラに走るしか生き残る道はない」という言説を見かけたこともあっただけに、本作の登場で「日本にも『スカイリム』のように世界で戦えるゲームがある」と自然に思えるようになりました。

本作は今を時めく他の優秀作品と同じく「時間泥棒」になり得る作品です。
私自身も1日10時間くらいぶっ通しでプレイしたことがたびたびありましたが、それはゲームの持つ面白さの他にも、ゲームがプレイヤーに与える刺激が、いい意味で小さかったからではないかと思います。
正直な話、私自身は歳を取るに従い、例えば、あるダンジョンをクリアしたなどでプレイがひと段落したら、どっと疲れてしまい、「今日はここで止めよう。」となることがままありました。
本作はこれまでのように高いパズル性を持ったダンジョン、凶悪なモンスターたちとの戦闘を強いられる場面、ゲームセンターのような音楽が鳴り響く中でのミニゲーム、などが少なく、そういった意味では従来の「ゼルダ感」が抑えられたゲームと見ることができます。
しかし、村から村、ある場所からある場所へのフィールド移動と、その最中での探索という「低刺激なアトラクション」(文字通り「魅了」されます)の占める割合は他のシリーズ作品よりも高い印象です。
本作のフィールド移動は「移動は単なる手段であり、しかもそれを妨害してくる敵がいる面倒なものである」という観念を壊してくれるものだったと思います。
また、各地に点在する試練の祠も、数こそ多いですがそれほど難易度の高いものではありませんでした。
しかし、これをクリアすればハートやがんばりゲージを増やすことができるので、また、コンプリートすると「ご褒美」もあるので、少しずつでも進めようとします。
そうした、「低刺激なアトラクション」が多数用意されたことで、長時間飽きずに、そして疲れずにプレイすることが可能なゲームに仕上がったのではないかと思います。

初プレイは発売からおよそ2年が経った2019年2月でした。
それまで、仕事が忙しく、ゲームなどする時間は全くありませんでした。
しかし、ちょうど、まとまった時間ができるタイミングでしたので、何かやってみようと思い、PCを含めて15年近く離れていたゲームプレイに復帰しました。
幸か不幸か「ゲームって、面白いもんだな。」と感じてしまったため、色々と手を出すことになり、今に至ります。

本作は既に続編の制作が決まっており、そちらも楽しみです。

【システム】
まず、アイテム関係について。
武器を手に入れる方法が、基本的に宝箱からの入手やモンスターからの戦利品であることに驚きました。
というよりも、そもそも、これまで「アイテム」や「道具」として一括された扱いだったものが、武器は武器、防具は防具といった認識のされ方をしたのに驚きました。
これまで、おおよそ「どこどこのダンジョンをクリアするのには、これこれのアイテムを入手する必要がある。だからある時点までゲームが進行したら、そのアイテムを取得できるようにさせる。」というパターンの繰り返しでアイテムの入手が進んでいく印象でしたが、本作では全くそんなことはなくなっていました。
アイテムから「オープンワールドだなぁ!」と感じたのが、いわゆる「素材」に相当するものが登場したことです。
防具の強化の他、体力回復や身体能力の増強のために料理を作るなど、ゼルダの伝説の世界に自然と溶け込める作りになっていました。
持てるアイテムの種類や数が爆発的に増えたことで、アイテム管理のUIも一新された感があります。

次に、ダンジョンについて。
ダンジョンは大きく、3つのパターンに分けられていると感じました。
ひとつは試練の祠、もうひとつは神獣や回生の祠のような従来型のダンジョン、最後がハイラル城やローメイなどのような探索要素が強いフィールドです。
試練の祠は、「お題」の意味を理解し、それに従って進めればクリアできる簡易ダンジョンだという認識です。
5分かからずにサクッとクリアできる祠があったり、ゴリ押しすればいい祠もあるので、「祠自体をクリアしてほしい」というよりは、「祠を見つけるためにこの世界を這いずり回ってほしい」という願いが込められた存在なのかなという印象を受けました。
従来型ダンジョンは、いわゆる過去作のダンジョンという説明が適当かと思います。
仕掛けられたギミックを解き、ボス部屋に迫り…とここまでは従来通りなのですが、ボスの倒し方が、「直前で手に入れたアイテムを使用する」というお馴染みのパターンではないため、いい意味で「あれっ?」と感じられ、新鮮味がありました。
最後に、探索要素の強いフィールドについてですが、私が想像するオープンワールドゲームのダンジョンという印象でした。
ろくにオープンワールドをプレイしたことがないので、どうこう言えないのですが、「フィールドからシームレスに(重要)入っていって、迫りくる敵を倒し、謎を解いて、ゴールを目指す」という体験ができ、プレイしていて「これぞダンジョン!」という感じがして楽しかったです。
作りこみは難しいし、制作には時間もかかるかと思いますが、こういったダンジョンが増えると個人的には面白いのかなと思っています。

他にも色々と感じた箇所はありますが、長くなりますので、特に感じるところのあった上記のみにとどめておきます。

【キャラクター】
キャラゲーではない(という認識です)ので、ゲーム進行上の主要なキャラクターたちについては「まぁ、こういうポジションなら、こういうキャラクターだよね。」というよくも悪くも安定したキャラクターづくりがされていた感じがしました。
本作では、むしろ「個々の登場人物たちの性格や特性」よりも、「年齢、性別、種族の異なるたくさんの人物たちを登場させた」ことにフォーカスする方が、作品の理解を助けることになるかもしれません。
つまり、「様々な考え方や生き方をしている普通の人々と呼びうる存在がたくさんいることで、よりこの世界をリアルなものにしている」ということです。
これまでにも市井の人々というのは確かに存在していましたが、アドバイスを与えるために存在する人、口うるさいおばさん、酔っ払い、特徴のある喋り方や行動をする人など、どこか目立つように作られた存在だったのではないかと思います。
これまでそうした「個性豊かな」人物たちを登場させてきただけに、そこからの「脱却」はお見事と言っても良いのではないのでしょうか。

上記は、ここで述べたかったことのひとつですが、これだけだと少し寂しいので、個別にキャラも取り上げてみましょう。

リンク
もうすでに発売されて2年以上経つゲームですので、「あたり前を見直したつもりが、次のあたり前を作っただけだった」という感も否めないのですが、本作のリンクが、お馴染みの緑の衣装に身を包むのは、アミーボによる課金を行わない場合、ずっと終盤になります。
最初は「おおっ!」と感じた「緑ではないリンク」も、いろいろなところで目に触れるにつけ、段々とこれが新しい「あたり前」になりつつあるのを感じています。
後で述べますが、記憶喪失という設定は素晴らしいものだと感じました。

ゼルダ
ゼルダ姫という人間が何を考え、どう行動したかにここまで迫った作品は本作が初めてではないでしょうか。
上記のリンクの記憶喪失と関連付けて、後でも述べますが、上手い具合に作ったもんだなぁと感心しました。
個人的には「ヒロインじゃなさそうで、やっぱり、ヒロインだった」という印象が強いです。

モリブリンとボコブリン
敵キャラです。
何が印象に残ったかというと、モリブリンがボコブリンを持ち上げてぶん投げてくる場面です。
正直、あってもなくてもどちらでもいいシーンに分類されますが、見てみるとコミカルで面白く、制作者のこだわりが見られる箇所だと思っています。

【ストーリー】
「巨悪の根源(ガノン)を倒し、世界(ハイラル)に平和を取り戻す。」という、とても王道的なストーリーです。
ゼルダのあたり前を見直す」ことを掲げた本作で、おそらく変えなかった数少ない点のひとつではないかと思います。
よく「ストーリーがない」と評されることのある本作ですが、ゲーム進行がある程度プレイヤーの意志に委ねられているため、決まった順序で進めないと面白さが伝わらないガチガチなストーリーは作れなかったのだと思います。
そうした制約の中で、ゲームのストーリーを進める楽しみのひとつである「徐々に明かされる謎」を埋め込むための手段として「リンクは記憶を失っている」という設定が生まれたのではないかと推測します。
ゲーム開始時より後にリンクが取る行動(記憶の断片を取り戻すこと)の順番がランダムであっても、最終的にはひとつの記憶が完成するという、どのピースから始めても完成する絵はひとつというジグソーパズルのような手法が取られていて、「上手いこと考えたなぁ。」と思いました。
これから起こることに対してこの手法を当てはめると支離滅裂になってしまいますが、過去に起きてしまったことであれば破綻しません。
これであれば、プレイヤーがどんな順序でゲームを進めていっても、モチベーションが持続し、ストーリー的な盛り上がりも味わうことができるはずです。
また、過去を題材にしたことの副産物(あるいは、こちらがメインか)として、ゼルダの内面を克明に描くことにも成功しました。
リンクの失われた記憶の中でゼルダとのインタラクションを描くことで、どうしてゼルダが今の状態になったのか、過去において彼女が何を感じ、何を考え、そして、どう行動したのかを明らかにしています。
これもこれまであまり見られなかったことで、素晴らしいと感じました。

【音楽】
「口ずさんでみろと言われると難しい。しかし、記憶には残っている。」
そんな音楽が多い作品だと感じました。
これもキャラクターと同様に、「世界にリアルさを持たせる」ためなのだと感じています。
「こういう場面だからこういう音楽」というよりは、「リンク、あるいはプレーヤーがそのタイミングでこういうことを感じるであろうからこの音楽にしよう」というような、そんな音楽だったと思います。
これから冒険が始まる胸の高鳴り、そして次の瞬間飛び込んでくる視覚的情報からプレイヤーが感じるであろう「うわぁ、広くて美しい世界だなぁ!」という印象を音楽にしたオープニング、朝という言葉、そして視覚から受ける清らかで静謐な雰囲気を表現したフィールド音楽、秘密めいた部族の村を表したカカリコ村の曲、長い旅路をようやくたどり着きほっと一息ついた様子を表現したハテノ村の音楽、そして、「マズい!どうしようどうしよう!!」という焦りの気持ちを表現したガーディアン戦の曲などなど。
個人的に一番感動したのは、いわゆる真エンディング、エピローグで流れていた曲です。
この曲は始まりから中盤にかけてもよかったのですが、一番最後で流れたのがFC版『ゼルダの伝説』のタイトル画面で流れている曲だったので、驚きと感動が両方襲ってきて震えました。