クラインのメモ帳

ゲームや日常について徒然と

『イースⅠ・Ⅱ』プレイ感想

現在まで続くシリーズの基礎を作った作品のPC エンジン移植版のプレイ感想。
プレイ時間は、約20時間(推定)。
プレイ環境はPCエンジンミニです。

【全体的な感想】
イース』シリーズに触れるのは本作が初めてです。
名作、名移植との呼び声が高い本作ですが、30年以上前の作品ということで、楽しめるかどうかなどについて全く不安がなかったわけではありません。
しかし、シンプルで分かりやすい操作、ゲームを盛り上げてくれる映像や音楽の数々、そして、魅力的なキャラクターと感動を誘うストーリーのおかげで、最初から最後までダレることなくプレイを進めることができました。
正確なプレイ時間は分かりませんが、飽きず倦まずにプレイできるちょうどよいボリュームだったと思います。
レトロゲームにありがちな単調なレベル上げや回りくどいダンジョンなどもなかったわけではありませんでしたが、そこまで気にはなりませんでした。


【システム】
このゲームの根幹がキャラクターやストーリーであるとするならば、それを支える環境がシステムといえます。
システム、特に技術面での素晴らしさを端的に述べるなら、音楽や映像による演出が当時の家庭用ゲーム機の最前線ともいえるレベルだったということです。
サウンドトラックからそのまま飛び出したような音源、声優によるキャラクターのボイスとそれに連動したドット絵によるアニメ、そして、それらで表現される演出の量。
本作が世に出たのは1989年。
まだ、スーパーファミコンもなく、ファミリーコンピュータ向けソフト『ドラゴンクエストⅣ』や『ファイナルファンタジーⅢ』も発売されていない時代です。
そんな時代に、音楽も映像もふんだんに取り入れられるCD-ROMという媒体で出たゲーム、それも『イース』というビッグタイトルが与えた衝撃はいかほどだったでしょうか。
元々、『イース』や『イースⅡ』の音楽や映像表現は素晴らしいと評判だっただけに、なおさらです。
オリジナルとなる『イース』や『イースⅡ』も、難しいRPGが増えつつある時代に、優しさを目指した点が衝撃的だったそうですが、その移植作である本作も上記の理由から相当なインパクトを与えたものと思います。

さて、ゲームそのものの操作系についてですが、キャラクターの移動については方向キーで行ういわゆる2D見下ろし視点のアクションRPGのそれです。
注目すべきは敵への攻撃時の操作です。
敵への通常攻撃時にこちらが行う必要のある操作は、ただ敵にぶつかるのみです。
そうすると、敵にダメージが入り、こちらの守備力いかんではこちらにもダメージが入るという仕組みになっています。
また、敵は基本的には飛び道具を使った攻撃はしてきません(こちらはできるのに)。
これはタイミングよくボタン操作して敵を攻撃・回避することが求められる(というか、それがなければアクションRPGと呼べないことが多い)アクションRPG作品の中では異色とも呼べるポイントだと思います。

キャラクターの成長と難易度についてですが、戦闘で得られる経験値が主人公のアドルと
敵キャラとのレベル差で決まるので、必然的により強い敵との戦闘を試みるようにデザインされています。
ただ、戦闘以外にイベントでの経験値(こちらは固定経験値)も入手できますので、自然と成長できるようにはなっています。
また、戦闘を避けても、『Ⅰ』『Ⅱ』それぞれの終盤では長いダンジョン攻略が要求されるため、必然的にレベルは上がっていくものと思います。
実際、そこまで熱心なレベル上げは行っていませんでしたが、最終的には90,000以上の経験値を得て、HP・MPは最大値と思われる255まで上げることができました。
こうして自然とレベルが上がっていき、敵も弱すぎず強すぎずの状態が終盤まで維持できているのは、優しいと同時に素晴らしいと感じました。


【キャラクター】
メインのキャラクターにばかりになるとは思いますが、印象に残ったキャラクターの紹介を。

アドル
本作の主人公で、当時の説明書(コナミPCエンジンミニ公式Webサイト参照)によれば、アドル・クリスティンという名前だそうです。
イース』シリーズは、「冒険稼業から引退したアドルが過去を振り返って書いた物語」という体であるため、どの作品も主人公はアドルです。
ただ、ヒロインは作品ごとに異なるという…

サラ
謎めいた雰囲気、謎めいた依頼をしてくる彼女はさぞや重要な人物なのだろうと思っていました。
しかし、何度かやり取りをするうちに忽然と姿を消してしまいます。
彼女は存在を消されたのでしょうか、それとも、どこかに身を隠しているだけなのでしょうか……
フードを被った魔導士風のグラフィックも好きだった(そして、本作では珍しかった)だけに、彼女がいなくなったのは寂しかったです。

レア
イースⅠ』で、街の片隅にいて、「銀のハーモニカを無くしたから探してきてほしい」という依頼を吹っかけてくる詩人として登場します。
また、ゲームを進めると、ダームの塔で幽閉されている状態の彼女に出会うなど、謎多い女性として描かれます。

フィーナ
神殿に囚われていた少女。
個人的には、『イースⅠ・Ⅱ』通してのヒロインは彼女なのではと思っています。
エンディングでのアドルとの会話やスタッフロールでアドルと踊っているシーンは「このゲームをやって本当によかったなぁ。」という気分にさせてくれました。


【ストーリー】
お使いをこなす過程でイースの本の各章を集める→実際にイースへ赴く→イースの謎に迫るという展開で物語は進んでいきます。
王道的なストーリー展開でしたが、元がPCソフトということもあり、当時の『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』あるいは『ゼルダの伝説』シリーズなどファミコンで人気を博していたRPGタイトルに比べ、男女の心情の機微など10代後半以降のプレイヤーに共感を呼びそうなキャラクター同士の絡みがより深く描かれているような気がしました。

構成をざっくりというと、『Ⅰ』で様々なネタ振りが行われ『Ⅱ』でそれを回収していっているような感じになっています。
オリジナルのPC88版はふたつの別々のソフトとして発売されましたが、これは容量の都合でふたつに分けられたらしく、ストーリーとしてはひとつのものなのだそうです。

ゲームをスタートさせると、冒頭、銀河万丈さんの語りで太古のイースにまつわる伝説が語られます。
その後、オープニングに続いて、ミネアの街に着いたアドルが占い師のサラに声をかけられるところから操作開始となります。
サラの話を聞いて、お使い的に冒険を進めるうちに、銀のハーモニカを求めるレアや神殿に囚われていた謎の少女フィーナと出会い、イースの本を集めることとなり、物語の核心に近づくアドル。
ダームの塔の頂上でダルク・ファクトと戦い、打ち破るまでが『Ⅰ』です。
ダルク・ファクトを倒し、6冊のイースの書を集めたアドルは不思議な光に包まれ、宙に浮かび上がります。
ここから『Ⅱ』がスタート。
気が付くと、リリアという女の子に介抱され、そこが伝説に謳われるイースの国であることを知るアドル。
これまたお使い的にダンジョンを攻略していく中で、徐々に古代イースの秘密に迫っていき、最後にはボスであるダームを倒し、諸悪の根源となる黒い真珠を破壊することとなります。
エンディングでは、平和が戻ったイースエステリア、少女から女神に戻っていくレアとフィーナが印象的でした。


【音楽】
本作をプレイしようと思ったきっかけのひとつに音楽があります。
元々、本作の草原で流れるFirst Step Towards Warを聴いて、「いい音楽だなぁ。」とは思っていたので、どのような音楽が聴けるのかは楽しみにしていました。
実のところ、プレイし始めてすぐの段階では、「音楽自体は全然悪くないんだけども、RPGの音楽にしてはちょっと騒がしすぎないか。」と感じていました。
おそらく、私自身が触れてきたRPG作品の影響で、「こういうシーンではこういう音楽が流れる」という思い込みの元にゲームをプレイしていたからだと思います。
私の中では、ダンジョンでは薄気味悪く恐怖を与えるような音楽、街ではアップテンポな音楽といった型が出来上がっており、それに照らし合わせた時に違和感を覚えたに相違ありません。
本作であれば、ダンジョンではそれなりに激しい音楽流れるのですが、それは「薄気味悪いダンジョン、そこに果敢に立ち向かうアドルの様子を描いている」と解釈できますし、街での(特に『Ⅱ』での)心が安らぐような音楽は「街は心安らか憩う場所」ということを表しているように感じます。
そのように理解して以降は、「このゲームにはこの音楽しかない」と思えるようになりました。

特に印象に残った曲は以下です。

The Syonin
Syoninはおそらく「商人」でしょう。
その名の通り、『Ⅰ』ショップで買い物をするときに流れる曲です。
上述の通り、「街はアップテンポで明るい曲」と思い込んでいたので、プレイ当初から明るくて、活気のある様が伝わってきて好きな曲です。

First Step Towards War
ミネアの街を出て流れるフィールド曲です。
勇ましい感じが伝わってきて、「さぁ、冒険へ向かうぞ!」という心持ちにさせてくれます。

Palace
神殿で流れる音楽。
この『イースⅠ・Ⅱ』では、水が滴るような「ピチャン」という音が組み込まれており、神殿の静謐な神聖さがオリジナルよりも増しているような気がしました。

Tower of the Shadow of Death
ダームの塔で流れる曲。
このダンジョンではかなりの時間を過ごすことになるので、何度となく聴いた曲です。
何度も聴く中で、多少聴き疲れた曲でもあります。

To Make the End of Battle
『Ⅱ』のオープニング曲。
このオープニングをPC88版でもPCE版でもいいので、リアルタイムで見た人の衝撃はいかほどだったのでしょうか。
新たな冒険の舞台へ赴くアドルやプレイヤーの心境に寄り添った気分の昂る曲だと思います。

Tender People
最終ダンジョン直前のラミアの村で流れる曲。
氷の世界と炎の世界を潜り抜けてきたプレイヤーにとってはホッとできると同時に、最終ダンジョンであるサルモン神殿の神聖さも伝わってくる、そんな音楽になっていると思います。

Palace of Salmon
その名の通り、サルモン神殿で流れる曲。
かなりあっちへ行ったりこっちへ行ったりを強いられるので、つくりになっているので、これもダームの塔のTower of the Shadow of Deathと同じく、少々聴き疲れてしまう曲です。
ただ、その曲調からは程よい緊張感と前へ進んでいこうとするアドルの姿を感じることができます。

See You Again
エンディングでスタッフロールとともに流れる曲。
元々は『イースⅠ』のエンディングだった曲を、『イースⅠ・Ⅱ』のエンディング曲として採用しています。
アドルとフィーナが一緒に踊っているのが本当に微笑ましいです。
イースⅠ』のエンディング曲が採用されていて、フィーナが踊っているということはやっぱり本作のメインヒロインはフィーナなんじゃないでしょうか……
「また会おう」という曲のタイトル的にも、フィーナもしくはレアの曲だなぁという感じがします。