クラインのメモ帳

ゲームや日常について徒然と

『幻影異聞録♯FE』プレイ感想

ファイアーエムブレム』シリーズ25周年の年にリリースされた、『ファイアーエムブレム』と『メガテン』『ペルソナ』のアトラスが融合したJRPGのプレイ感想。
プレイ時間は、約100時間。
プレイ環境はWii Uです。

【全体的な感想】
本作を一言で言うなれば「異色のコラボが生み出した王道JRPG」「ストーリーやキャラクターによってではなく、システムでとてつもなく面白くなるJRPG」ではないでしょうか。
本作との出会いについてですが、2019年の夏に『ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣』に手を出して以来、シリーズ作品のことを調べていく過程で本作のことも当然聞き及んでいました。
「まずはFE原作を。」ということで、スピンオフにあたる本作は後回しにしていました。
そこに9月のNintendo DirectでのSwitch版リリースの報が入りました。
この時は「なるほど、Switchでできるのか、それなら、Wii Uのは買わなくていいな。」と思いました。
その後、任天堂から出た情報により、どうやら、Wii U版とSwitch版には大なり小なりの差異があるということが分かりました。
「それならそれで、どちらもやってみよう。」
そう思って11月上旬に本作を購入しました。

プレイにあたって不安がなかったわけではありません。
私がアトラスの作品を未プレイだという点がひとつと、「今どきの若者たち」、それも芸能界で活躍する人々が主人公ということで、かなりキラキラしたものを感じていました。
「こんなキラキラしたゲーム、楽しめるかな。」
というのが、プレイ前の率直な想いでした。
実際にプレイを始めると、序章の中盤あたりまでは、ゲームゲームした展開や演出に、ちょっぴり苦笑いした時もありましたが、ゲームの世界観に入り切ってしまうと(私の場合は、魅力的なキャラクターの存在がそのきっかけでした)、飽きることなくプレイでき、そのままエンディングを迎えられたようなそんな感じのゲームでした。

FEとアトラスの割合ですが、「FE:アトラス=3:7」だというのが主観です。
本作はSRPGではないので、その時点で「FEらしさ」の大部分は失われてしまうのかなと思います。

さて、感想なのですが、要素ごとの感想は後に譲るとして、全体的には「キャラ、音楽、そしてシステム面で色々な要素を盛り込みつつもキレイにまとまった作品」という印象です(その分ストーリーの起伏や盛り込みは少なかったように思いますが)。
それ以外の言葉で言うのであれば、「Wii Uを持っている人、プレイするか否かを迷っている人、FE・アトラス・JRPG・登場する楽曲のいずれかが好きな人はプレイして損はない作品」ではないでしょうか。

【システム】
様々なシステムが盛り込まれていて、よくこれだけのシステムを盛り込んだなと思えるくらいのボリュームでした。

本作はさまざまなパートの組み合わせで成り立っていて、それらの要素ごとに分解してそれぞれのシステムについて感想を述べていこうと思います。
本作には大きく以下のパートやシステムがあったという認識です。

メインストーリー攻略
 →イドラスフィア攻略

サイドストーリー攻略
 →キャラクター別

リクエスト攻略

ユニティシステム
 →カルネージユニティ
 →レディアントユニティ
 →クラスチェンジ

バトルシステム
 →セッションシステム
 →その他

・メインストーリー攻略→イドラスフィア攻略
本作のメインストーリーでは、各章毎にイドラスフィアと呼ばれるダンジョンを攻略して、ボスを撃破するのが、プレイヤーの大きな目的となります。
各イドラスフィアとも、空間的にはそれほど広くはありませんが、パズル的なギミックがいくつかあり、いい感じに攻略に手間取るようにできています。
このあたりはひょっとしたら「ゼルダ的」と言えるかもしれません。
未プレイですが、アトラス作品のダンジョンもひょっとしたらこんな感じなのかもしれませんね。
このイドラスフィア、最初に訪れた段階では入ることのできないエリアがあります。
後々、そこを攻略することになるのですが、初見時に「いつかは入れるようになるのかな?」と思わせて、プレイヤーの興味を持続させるという意味でも、また、東京の街をモデルにしたマップに無数のダンジョンが乱立するのを避けるという意味でも、上手くできたシステムだなと思いました。
ダンジョンマップはWii UのGamePad上に表示されます。
マップを見ないと攻略が難しいイドラスフィアもありますが、GamePadという別画面に映すというのは、モニター上のプレイ画面をすっきりさせるいい工夫だと思いました。
イドラスフィア内には、宝箱がありますが、アイテムによっては「宝の鍵」を使わないといけない宝箱がある点はちょっと「FE的」でニヤリとしました。

・サイドストーリー攻略→キャラクター別
主人公を除くメインキャラクター9人にはサイドストーリーが3回ずつ用意されています。
そのうち、プレイアブルでない3人のキャラクターはメインストーリーの進行度合いによって、プレイアブルな6人はそれに加えて、戦闘でレベルアップするステージランクに応じてサイドストーリーを開始できます。
サイドストーリーの開始可能時期は、各キャラクターから、情報端末にメッセージが飛んでくることによって明らかになります。
Wii UのGamePadがまさにその情報端末のような扱いになっていて、最初はいちいち、タッチペンで画面を操作するのが面倒でしたが、そのうち、各キャラクターと本当にメッセージをやり取りしているような感覚になり、プレイヤーをゲームの世界に没入させる装置としての役割も果たしているのかなと感じました。
サイドストーリーは各キャラクターからのお願いを叶えることで達成できます。
選択肢に注意して話を聞くだけの場合もあれば、ボスクラスの敵を撃破する必要のあるお願いもあります。
このサイドストーリーを通して、各キャラクターの内面を描き、主人公との親密度が高まり、エンディングへの変化がもたらされます。
サイドストーリーそのものはよく言えば王道的な、悪く言えば陳腐な内容が多かったと思います。
ただ、奇をてらった内容でなくても楽しめたというのは事実です。
欲を言えば、FEライクに各キャラクターと個別に結ばれるエンディングはあってもいいのかなと思いました。
本作は主人公を中心にストーリー進められましたが、それ以外のキャラクター相互の絆のようなものも、もっともっと描かれても面白かったかもしれません。

・リクエスト攻略
メインストーリー及び関連するリクエストの攻略度合いに応じて発生します。
上述の「宝の鍵」といった有用なアイテムや、リクエスト攻略でしか入手できないアイテムがあるので、積極的にクリアしたかったのですが、メインストーリーやサイドストーリーを進めるとお腹いっぱいになってしまい、なかなか後手に回ってしまう感じでした。
リクエスト内容は、どこかに落ちている物を拾ってきたり、敵ミラージュ(モンスター)を倒したりといった様々なお使いです。
これに関連して登場するキャラクターたちも個性豊かだったと思います。

・ユニティシステム→カルネージユニティ
ユニティとは、本作のメインキャラクターのひとりで『暗黒竜』に登場するチキが行う、様々な補助です。
このユニティを行うには、イベントをこなしたり、敵ミラージュを倒したり、宝箱の中から入手したりする、特定のパフォーマと呼ばれるアイテムが必要になります。
うち、カルネージユニティは、いわゆる武器の錬成になります。
カルネージそのものは武器と同義ですが、装備して戦闘に参加すると、キャラクターの経験値とは別にカルネージ強化用の経験値も取得でき、一定値に達すると様々なスキルが覚えられます。
本作のスキルは覚えていられる個数に制限がありますが、一度強化し終えたカルネージを再度ユニティして強化しなおすこともでき、一度諦めたスキルを状況に応じてもう一度習得することができるのが、私のような「捨てたくても捨てられない」タイプの人間には合っていて面白いと感じました。
また、再強化でしか習得できないスキルもあるので、そういった意味でも再強化の意欲は湧くかと思います。

・ユニティシステム→レディアントユニティ
こちらはスキルそのものをユニティしてしまうというもの。
ここで作られるレディアントスキルは、HPの上昇など持っているだけで効果があるものが多く、一部は取得していないとメインストーリーの攻略が進められないものもあります。
また、このスキルは個数制限を気にすることなく取得できるので、なるべくなら全て集めておいた方がいいと思います。
ただ、大半が補助スキルなので、実感としては「このスキルのおかげで助かった!!」という印象を持つことは一部のスキルを除いて少なかったように思います。
それでも、宝箱の鍵が開けられる「鍵開け」のスキルはなるべく早くに取得しておきたかったなぁと感じています。
サイドストーリーでの途中で行うレディアントユニティがあるのですが、そちらはサイドストーリーの一環ということで、対象キャラクターとそのミラージュとの会話が見られます。
こちらはキャラクターやミラージュの内面を理解でき、またコミカルで面白いものが多いので、見ていて楽しかったですし、このゲームをプレイされる方ならぜひ見ていただければと思っている場面のひとつです。

・ユニティシステム→クラスチェンジ
ファイアーエムブレム』ファンにはお馴染みのシステムかと思います。
ファイアーエムブレム』シリーズでは、各種のステータス補正を目的として行われることが主ですが、本作のクラスチェンジはそれに加えて、それによってユニティできるカルネージを増やすという目的があります。
クラスチェンジ先は各ミラージュにふたつずつ用意されており、あるクラスにチェンジして、すぐさま別のクラスにチェンジしても全く問題はありません。
クラスチェンジにはこちらもシリーズお馴染みのマスタープルフが必要です。
ただ、一度でもクラスチェンジを行うと、下級職には戻れないので、その点だけは要注意でしょうか。
本作ではクラスに応じて、ミラージュの見た目も大きく変化しますので、ステータスやカルネージの補正をあまり気にしないのであれば、お気に入りの見た目で楽しむのもいいかもしれません。
クラスチェンジ後の初戦闘では、ミラージュとそのマスターとのちょっとした会話が聞けますので、そちらもぜひ。

・バトルシステム→セッションシステム
バトルにおけるセッションシステムは、個人的に本作で一番感心させられた点であり、「ターン制RPGでここまで面白いものが作れるのか。」あるいは「バトルによって面白くなるRPGもあるんだ。」というのが本作のバトルを経験しての感想です。

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詳細は動画(こちらはSwitch版『Encore』の宣伝動画になります)の通りですが、攻撃が続いていく様を眺めているのがただただ楽しかったです。
初めて「セッション→デュオ→セッション」と続いていくの見たときには思わず「え!?」と声が出ました。
このバトル体験は、本作で一番の見どころであり、ひょっとしたら、唯一無二の体験なのかもしれません。

・バトルシステム→その他
本作のバトルはコマンド式ですが、「味方キャラのコマンドを一斉に選択した後、「すばやさ」「はやさ」に応じて、敵味方が攻撃する」というパターンではなく、敵味方個別に攻撃順が回ってきて攻撃を繰り出します。
これも、画面上部に攻撃順が示されており、「攻撃順を遅らせる」という一部スキルにも、存在感がありました。
また、スキルについては、技名に全く馴染みのないプレイヤーでも、どういった属性のどういった効果のあるスキルなのかを、表示してくれるので、非常に助かりました。
親切な設計だったと思います。

【キャラクター】
キャラクターにセリフがあり、会話をする作品ですので、自然とキャラクターの存在感は強くなっていきました。
メインキャラクターのみならず、いわゆる「まちの人」や「モブキャラ」と呼ばれる人、リクエストでしか関わらない人にも、豊かな個性が与えられていると対話を通して感じました。
メインキャラクターは、人によっての好き嫌いは当然あるかとは思いますが、当時としては珍しい、非常に王道的な性格付けのされた、それでいて個性あふれる魅力的なキャラクターたちだったと思います。

これは個人的な希望というか欲になりなすが、これだけ魅力的なキャラクターたちが登場しているので、主人公の蒼井樹とだけでなく、その他のキャラクター相互に絡む場面ももう少し見たかったなと思いました。
これは、人間とミラージュとを問わずですね。
あとは、主人公とミラージュたちとのお別れのシーンが結構あっさりしていて、ちょっぴり拍子抜けした感じです。
ただ、「あぁ、これでこのゲームも終わっちゃうんだなぁ。」という印象を与えるという意味では、あれでよかったのかもしれません。

感想を書きたいキャラクターは沢山いますが、バトルでもメインに活躍するメンバーに絞りましょう。

蒼井樹
本作の主人公です。
まさに『ファイアーエムブレム』のロードにあたるキャラクターで、キャラメイクの際の「強すぎず、薄すぎず」の度合いが難しかったのではないかと、勝手に想像しています。
ゲーム開始時点で、プロポーション抜群の幼馴染や、芸能界に片足を突っ込んでいる親友がいるというだけでもすごいですが、その後どんどん周囲にはすごい人々が集まってきます。
それでも、そこはマイペースを地で行くロードなので、周囲に流されず、自分のやるべきことをきっちりやって、そのすごい人々も認めるメンバーの中心に成長していきます。
そして、宿敵との対決を経て、戦闘以外でもメンバーの中心になるエンディングには、ちょっと感動しました。
これはベタと言えばベタですが、現実世界だとなかなか難しいことだと思うので、ゲームならではの設定としてなかなか面白いなと思いました。
武器は剣、メインの属性攻撃は雷でしょうか。
ミラージュはクロム。
『覚醒』は未プレイですが、本作には軍師のルフレや子世代のルキナに相当するキャラクターがいないので、ロードらしいロード役ができたのかなと思います。
男気溢れるカッコいいミラージュでした。

織部つばさ
本作のメインヒロイン(だと勝手に思っています)。
蒼井樹のプロポーション抜群の幼馴染です。
購入当初、パッケージイラストを見るに、その表情から少し憂いのようなものを感じたので、「あー、この娘は真面目な女の子で、主人公と対立する場面もあるのかなぁ……」と思っていましたが……
実際には、最初から最後まで「イツキくん好き好き」オーラ全開で、アホの子タイプのキャラクターでした。
もっとも、真面目な性格というか何事にも真摯なのはその通りでしたが。
武器は槍、メインの属性攻撃は衝撃(風)でした。
あとは回復担当ですね。
ミラージュはシーダ
ペガサスナイトは『ファイアーエムブレム』のどの作品でも、ヒロイン感を出しているので、適役ではないと思いました。
わざとなのか素なのかはわかりませんが、ちょっとすっとぼけたような言動をするのも、原作のシーダらしさがあっていいなと思いました。
マルスとの絡みが全くなかったのが、唯一残念に思った点でした……

赤城斗馬
蒼井樹の親友で、フォルトナでのそして、ミラージュマスターとしての先輩です。
「親友」という言葉から「時に主人公と対立することもあるが、なんだかんだ心の底では通じ合っている」というキャラクター像を想像していましたが、全くそんなことはなく、最初から最後まで「親友キャラ」でした。
ここまで親友一直線なキャラクターはあまり見たことがないかもしれません。
見た目は今どきの若者らしいちょっぴり軽い感じですが、彼の様々なリアクションを見るに、実はフォルトナでは一番の常識人なのかもしれません。
武器は槍、メインの属性攻撃は火でした。
覚える補助系スキルはかなり有用ですが、このゲームの場合、そうした補助スキルのほとんどがアイテムで代用できてしまうので、起用する場合は高い攻撃力を活かしてガンガン攻撃してもらっていました。
ミラージュはカイン。
赤城斗馬のもうひとりの親友、そして兄貴といった感じで、時に斗馬と一緒に全力で突き進み、時にたしなめるような感じになったり、とマスターである斗馬のよきサポート役という印象を受けました。
アベルとの絡みがあったのは嬉しかったです。
ソシアルナイトの馬を二輪にしたのはいいアイデアだと思いました。

黒乃霧亜
フォルトナの先輩で実力のある歌手です。
彼女が一番、最初に思い描いていたキャラクター像と実際とでズレの少なかった人物です。
「かっこよくて、クールな人で通っているけど、実は可愛いものが好きだったり、本人も可愛くなりたいと思っていたり……」と、そんな感じの人物です。
武器は杖ですが、魔導士タイプなので、基本的には魔法攻撃ばかりでした。
メインの属性攻撃は氷でしょうか。
アドリブパフォーマンスの「迷路」は、プレイ中に何度も見ることになりました。
ミラージュはサーリャ。
『覚醒』未プレイなので、どんなキャラなのかなというところも含めて、新鮮でした。
思っていた以上にマイペースな感じのキャラクターという印象でした。
もうちょっとダークなイメージだったので。

弓弦エレオノーラ
埼玉県代表のハリウッド志望の女優。
サイドストーリーはなぜかデートばっかりでした。
あれだけ、デートしていてもデート感があまり漂っていなかったのが、すごいと言えばすごいかもしれません。
「気が強いけど、ちょっぴり寂しがり屋さん」という印象は最初から最後まであまり変わりませんでした。
サイドストーリーを全てクリアすると本当にハリウッドに行ってしまう展開になったのは、これもゲームながらすごいと感じました。
武器は弓で、メインの属性攻撃は雷だったでしょうか。
スペシャルパフォーマンスの「オール・デッド」が、特にワイルドエネミー攻略にはかなり有用な技だったのと、ペガサスナイトドラゴンナイトに特効があるのとで、ゲーム後半は特にお世話になりました。
ミラージュはヴィオール。
弓弦エレオノーラはヴィオールからアプローチしたキャラクターなのでしょうか。
口癖の「ハリウッド的」はヴィオールの「貴族的」から生まれたのかなという気が強くするので、そう感じました。
我が強い印象の彼女ですが、同じく個性的なヴィオールとの距離感は不思議とうまく取れていた気がします。

源まもり
肉弾戦のできる小学生。
「芸能界では主人公たちより先輩」という設定から、時には厳しいことも言う「小さなお姉さん」を想像していましたが、違っていました。
「思春期を迎えつつある大人しめの女の子」という感じでした。
サイドストーリーは「周りの言うことをきちんと聞くいい子」から「自分の主張をきちんと伝えられる子」に変わっていく過程が描かれていました。
個人的には、有用でありながら使いこなせなかったキャラクターです。
マーキングというスキルで彼女に敵の攻撃を集中させておいて、その間に攻撃するといった戦法は、「倒されるとイヤだなぁ。」という気持ちが強かったため、ボス戦でもあまり取りませんでした。
武器は斧で、メインの属性攻撃は氷でした。
ミラージュはドーガ。
ドーガについては、「あ、すごくいいキャラ選定とイメージ絵だな。」と感じました。
ドーガは、当然原作でのキャラクターイラストはありますが、私自身は「ドーガ=アーマーナイトという存在そのもの」と思っているので、「アーマーナイトならドーガ」という選択は非常にしっくりときました。
足がなく、ふわふわ浮かんでいる感じなのも、デカデカとした鎧の姿と絶妙にマッチしていていいなと感じました。

剣弥代
カリスマエンターテイナー(だったりそうでなかったり)。
黒乃霧亜に似たタイプの人物ですが、彼は彼女と違い、事前のイメージと実際のイメージの乖離が一番激しかった人物です。
もちろん、いい意味で。
剣弥代はストーリー途中までは敵対する場面もあり、実際に刃を交えるシーンもあります。
この段階では、キャラクターの性格というよりは、能力面について、「まぁ、こういう敵の時に強いキャラって、仲間になると弱くなるよね。」と漠然と想像していました。
そして、仲間になった時も、見た目に違わぬ折り目正しい「いいキャラ」だったので、「なるほど、こんな感じか。」と思っていましたが、サイドストーリーを進めてみると……
結果的には、フォルトナの一員として非常にいいキャラクターだったと思います。
そして、実際には、仲間になっても、それほど弱くなるということがなかったので、彼はかなりの場面で戦闘要員でした。
武器は剣で、メインの属性攻撃は雷だったような。
物理と魔法の違いはありますが、蒼井樹と似たような運用をしていました。
ただ、カウンターは非常に有用で、バトルにおいては「弥代といえばカウンター」というイメージでした。
ミラージュはナバール
これも、ヴィオールと同様に、ナバールから剣弥代のキャラクターを作ったのかなと思えるくらいに、ふたりは似ているところが多いなと感じました。

【ストーリー】
メインストーリーの大きな流れは、
1.「ある事件で失踪した、織部つばさの姉、綾羽を取り戻す。」

2.「フォルトナのメンバー、特に織部つばさが芸能人としてステップアップしていく。新たな事件が発生し、それを解決する過程で、仲間が増え、核心に近づく。蒼井樹とメンバーとの絆も深くなる。」

3.「綾羽の消失した事件や敵の黒幕の正体がわかり、対決する。」
となります。
最後の3が『暗黒竜』を下敷きにしたストーリーで、その時点で出てくるイドラスフィアも、どことなくそれを想起させる造りになっていました。
反対に言ってしまうと、1と2についてはそこまでFE感はないと感じました。
メインストーリーは、上記の通り「主人公が、紆余曲折を経て、悪と対決する」という王道そのもので、あまりそれ以外の要素はなかったと思います。

サイドストーリーは、上述の通り、主人公が他のメインキャラクターの悩みや注文に応える中で、そのキャラのことを深く理解し、主人公との親睦を深めていくものでした。
これも「まさか、そんなことが!!」というような裏をかくようなお話ではありませんでした。
ただ、メインストーリーや前段階のサイドストーリーで少し触れた内容を汲み取って伏線回収をするようなサイドストーリーがあり、そちらは王道的ながらも「ああ、なるほどね。」と納得させられるものが多く、その点はキレイにまとまっていたと思いました。

既に上述の通りですが、「こういうシーンが欲しかったなぁ」というところを挙げるとすれば、ゲームボリュームの関係もあるのでしょうが、キャラクター相互の絡み(主人公以外との)でしょうか。
登場人物たちはかなりいい味を出していると思うので、主人公以外とのフォルトナメンバー相互の絆や日常などももっとあっても良かったと思います。
また、人間キャラ同士もそうですが、ミラージュ同士の掛け合いなんかも、沢山あれば面白かったかなと思います。

【音楽】
登場する歌唱曲については様々なところで触れられているので、それについてはここでは「いい曲ぞろいなので実際に聴いてみてください!」というに留めたいと思います。
歌以外のゲーム音楽に関しては、特に、私のように、現代世界がモチーフのRPGをプレイしたことがない人間にとって驚きだった点があります。
それは「使われている音の目指す方向が現代の若者の音でありながら、何度聴いても飽きがこない音だった」ということです。
RPGの音楽はフィールドの曲やまちの曲、戦闘の曲など、プレイ中にひとつの楽曲を何度も耳にすることがあるため、飽きないようにクラシック音楽的な音作りをされる場合が多いようです。
「王道RPG」によくある中世ヨーロッパ的な世界観、あるいは現代や未来、SFでも壮大なオーケストラでの演奏が似合う世界観の作品であれば、そのような「あ、クラシックを意識しているんだな」という音作りがプレイヤーからも見えやすいかと思います。
しかし、本作は「現代日本が舞台で、そこの若者が主役の作品」であり、聞こえてくる音からは「クラシック音楽的な音作り」を全く感じさせないにも関わらず、飽きずにむしろ耳に残る(もちろんいい意味で)音だったと思います。
音が現代的なだけで、楽曲はクラシックに則った作りなのかもしれませんが、それにしても、そうした音作りができているというのは、登場する歌唱曲と同程度には注目されてもいいのかなと感じました。